甥の死の記憶(終)


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その後、遺体は家に戻され、すぐに葬式が行われた。イスラムでは日本のように通夜のあと葬式といった段取りはなく、ほぼその日のうちに埋葬が行われる。

近くの墓地に全員が移動、甥の亡骸を埋葬した後、全員でコーランを読む。初めて当地にやってきた日本人が、うるさくて眠れないと愚痴るコーランも、このときだけは、死者を弔うには、もっとも適した祈りではないかと思えるほど、哀しい響きを持っていた。

子供を見送る母は、涙を流すも口許に笑みを浮かべ、コーランを口ずさんでいた。正直に告白するが、やはり他人である私は、甥の死に関して涙を流すことはなく、客観的にインドネシアの文化を観察していた。しかし、この母親の涙目ながら口許に浮かんだ笑みを見て、思わず貰い泣きをしてしまったことも事実として報告しておきたい。

甥の容態から考えて、たとえ事故の後、すぐに手術が行われたとしても助からなかった可能性は大きい。しかし日本や欧米のように救急車が手配され、すぐにでも手術が行われていれば、助かる事例も多かろう。残念ながら現在のインドネシアでまずそれは不可能。私達在イ者はすぐ死と隣り合わせに生きているのである。(終)


※過去人気のあった(?)シリーズを加筆修正してお届けしています。

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