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「エンガン」
西 祥郎

第10回

ところが、その女の声が言葉の形を少年の耳に残した時、少年の心に疑問が湧きました。『助けて、助けて!』なんて、お化けにしてはちょっと変だ。少年は勇気を奮い起こすと、その木に向かって言いました。「おまえは誰だ?そこでいったい何をしている?」

木の内側から微かな言葉が聞こえてきました。「わたしはロンカンです。あなたは誰?」少年はいきなり笑い出しました。

「お后がこんなところにいるなんて、ぼくが信じると思うかい?お后は館の中にいるんだ。いくらお化けでも、もっと上等の嘘をつくもんだよ。」
「わたしは本当にロンカンなのよ。エンガンがわたしをこの中に閉じ込めたの。あなたの名前を教えて。そしてわたしを助けてくれるかどうか教えて。」
「ぼくの名前はシディン、お館の厩で働いている。」シディンはいまだに半信半疑。この相手が本当はお化けで、こっちに油断させておいて木の中に引きずり込もうとしてるんだったら・・・・
「シディン、どうかわたしを助けて。この恐ろしい場所から救い出して。こんな場所にこれ以上いると死んでしまうわ。わたしはミナンに帰りたい。」

しゃくりあげて泣くその声にシディンは心を決めました。この館にやってきたときとは見た目も変わり果てたロンカン王女に、シディンは同情していたのです。この人を助けなければ。
「あっ、神様!親方がやってくる。もう行かなきゃ。お后様、ぼくは夕方にきっと戻ってきますから。そして夜になったらここを抜け出すんです。」

シディンがすばやく姿を隠してしばらくすると、馬係りの親方がやってきてそのあたりを見回し、ため息をついてからシディンが去った方に歩いて行きました。[ 続く ]

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この作品は西さんの提供です


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