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「エンガン」
西 祥郎

第14回

エンガンは夜の闇に紛れて、さらに別荘へと近付きます。かれの目は、別荘の中に灯された明かりの中に映し出されているロンカンと母后の姿を認めました。別荘のひとびとの様子からは、かれらがその夜、別荘を後にする気配が少しも感じられません。裁きを下すのは今夜なのだ。

別荘の裏は切り立った崖になっています。エンガンは単身、崖の下に回りこむとそこをよじ登りました。警護している衛兵たちに気付かれないで別荘の建物の床下まで達することができたエンガンは、短剣を抜くと建物を支えている太い杭を一本一本削り始めたのです。それは気の遠くなるような仕事でしたが、復讐の一念がかれに力を与え、それをやりおおすのに成功したのです。

一般的にスマトラの建物は高床式と呼ばれる建築形式で、何本もの杭の上に建てられています。エンガンはその杭に切れ目を入れ、薄皮一枚を残して削り取りました。上にある建物が揺れるとすべての杭がその切れ目のところで折れ、人間の背より高い杭の上に乗っていた建物は崩れ落ちることになるはずです。汗びっしょりになってエンガンがその仕事を終えた時、夜明けは間近に迫っていました。別荘の中はいまだ眠りの中に沈んだままで、静まりかえっています。エンガンはすばやく別荘の床下から抜け出すと、そこから少し離れた窪地に身を隠しました。周りは密集した藪に囲まれており、衛兵たちに見つかる心配はありません。かれはそこから事の成り行きを見守ろうというのです。[ 続く ]

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この作品は西さんの提供です


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