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「エンガン」
西 祥郎

「エンガン第4回」

ミナンカバウ王宮のあるパガルユンは山の中。高床式の巨大な宮殿を見上げる山の斜面には、ロンカンの父王の家臣たちが農耕にいそしみながら暮らしています。ロンカン王女は家臣たちの暮らしに強い興味を持ち、しばしば外出してはかれらの家に立ち寄って話し込むのです。そして貧しい者や病気にたおれた者たちを、親身になって助けてやろうとするのです。優しい王女の細やかな心遣いに、ミナンカバウの民は心から王女を敬愛しました。父王も王女の慈悲の心とその善行を称賛し、王女を力づけました。

「もしいつの日か、おまえが女王になったなら、領民を気遣い、愛してやるのだ。そうすれば民からの敬愛が得られ、領主と民との和合が実現し、国に平和と繁栄がもたらされる。」

ところが、将来自分は父王の後を継いでミナンカバウの女王になるものと思っていたロンカン王女も、その考えに確信が持てなくなってしまいました。長逗留のエンガン王子に、かの女は深く恋してしまったのです。じっさい、ひとびとの目も、そのふたりが似合いの夫婦になれる、と見ていました。ミナンカバウ王でさえそうだったのです。こうしてエンガン王子とロンカン王女の心がひとつに結ばれると、王女は父王に自分の希望を伝えます。父王はしばらく考えたあとで言いました。

「わたしはおまえが婿を取ってこの国の女王となり、この国を治めることを願っていた。わたしはおまえに王位を譲るつもりだった。しかしエンガン王子をこの国の婿にすることはできない。かれには自分の領国がある。おまえにとって、エンガン王子の妻になることが一番の幸せなら、そうする方が良いだろう。本来、女は夫を裏で支え、助けるのが最良のあり方にちがいないのだから。」

ロンカン王女から父王の意見を聞いたエンガン王子は躍り上がって喜び、翌日、頃合を見てミナンカバウ王に王女との結婚を申し込みました。この話はまたたくうちに王領内に広がり、似合いのふたりの結婚話に地元の空気は花模様に染まります。[ 続く ]

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この作品は西さんの提供です


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