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「クラカタウ」
西 祥郎

「クラカタウ第15回」

「どんな治療をするのかね?」
「まじない、祈祷した水、薬草などを使っております。めくらも足萎えもつんぼもみんな健康者になると大評判で、わしも歯痛を治してもらいました。」
「これはますます興味を引かれる。わたしが直接会ってもっと調べてみたい。ハリさん、明日わたしがその行者と会うのを案内してもらえるだろうか?」
「そりゃあもう、よろこんで。」
「馬でそこまで行けるかね?」
「スカラメまでは乗り物で行けますが、その先はチタンジュル川に沿って歩きになります。チタンジュル川の水源近くまで行くと治療を求めてやってきた病人たちの仮小屋があり、その付近にはコーヒーワルンや食べ物を売る店もあります。行者が治療を行う小屋はずっと上の頂上あたりで、そこからはスンダ海峡が一望のもと。島々からスマトラの海岸までも目にすることができます。」
「では明朝6時にここから一緒にチワリラン山へ向かうことにしよう。」

ラデン・ムリアが諜報役に使っているハリは椅子から立ち上がると若い副郡長に拝礼してから部屋をあとにした。ラデン・ムリアは自分の瞑想の中に沈んだ。管区の山中に正体不明の外来者がおり、そして諜報役に集めさせた情報にはたくさんの秘密が埋もれている。それらの秘密を自分が乗り出して明らかにするのだ。そしてバドゥイだというその外来者の正体を暴いてみせよう。
     
しかしその秘密が自分とそしてランカスビトゥン県令である自分の父親に思いもよらない関わりを持つものであろうとは、そのときのラデン・ムリアには想像することさえできなかったのである。
[ 続く ]


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この作品は西さんの提供です


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