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「クラカタウ」
西 祥郎

「クラカタウ(23)」

会食後また一時間ほど対話したあと、ラデン・ムリアはシンダンラウトに戻るために行者の小屋を辞した。行者は「またいつでもお越しください」と言って山を下るラデン・ムリアとハリを山頂から見送った。

ハリと別れて副郡長役所に戻ったラデン・ムリアは執務室の来客用椅子に座って行者ヌサ・ブラマとの対話を頭の中で整理していたが、チワリラン山頂で会ったふたりの女性の面影がその作業の邪魔をした。爽やかで透明な美しさをたたえたレッナサリの容貌はその母であるヤティと共通する部分がある。そしてヤティの容貌の中に自分が見出したデジャビューはいったい何だったのだろうか。ラデン・ムリアは記憶の糸を手繰り始めていた。あの面影を自分はどこで目にしたのだろう?それはいったい誰だったのだろうか?かれの思いは諸所に走った。そのひとつひとつをじっくりと思い返してみたが、しかし思い当たる人物は浮かび上がってこない。と、そのとき執務室の壁にかかっている時計が鳴った。もう夕刻の四時だ。ラデン・ムリアは時計を見た。時計の下に並べて掛けてある親族の写真が目に入る。父と母がいる。妹がいる。祖父母がおり、曽祖父がいる。視線でそれらを追ったラデン・ムリアは「あっ!」と思わず声をあげた。ヤティの容貌の中に見た面影がそこにあった。祖母だ。しかし祖母はバンテン王国の貴族の出で、その一族はチレゴンを拠点にしている。バドゥイとの接点があるとは考えられない。

「これはいったいどういうことなのだろうか?どうやらもっと調べてみる必要がありそうだ。」ラデン・ムリアは自分に向かって独り言をつぶやいた。
[ 続く ]

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この作品は西さんの提供です


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