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「クラカタウ」
西 祥郎

「クラカタウ(25)」

ラデン・ムリアはパレンバン者の輪に近付くと、後ろ向きのアブドゥル・シンティルの背中に手を当てて低い声で言った。「なあ、友よ。ここで悪事はご法度だ。わたしは警察の者で、ここで副郡長をしている。そもそもあんたは行者に目を治してもらった恩を受けながら、恩人に後足で砂をかけようというのはどういう了見なのかね。」
     
ラデン・ムリアが近寄って来たのに不快な目を向けていたパレンバン者たちは突然雷にでも打たれたかのように態度を変え顔色を青くして言い訳した。

「いえいえ、滅相もない。わたしらは冗談半分に話をしていただけで、決して本気でそんなことをしようと思っていたわけじゃございません。どうかご勘弁を。」
「あんたたちが冗談か本気か、わたしにそんなことはわからない。だがたとえ冗談半分にせよ、謝礼も受け取らないで治療を施している行者に対してそのような悪事を考える者をそのままにはしておけぬ。そんな腐ったことを考える者がいるということを行者に注意してやらねばならない。あんたたちがレッナサリの髪の毛一本にでも手を出そうとするなら、監獄が待ち受けていることを忘れるな。あんたたちは今すぐここから立ち去ってもらおう。」
     
パレンバン者は口々に、無聊を慰めるために冗談を言い合っていただけだと主張したが、副郡長がまったく聞く耳を持たないことを確信すると諦めて仮小屋に戻り、荷物をまとめてぶつくさと不平をたれながら山を下って行った。
[ 続く ]

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この作品は西さんの提供です


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