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「クラカタウ」
西 祥郎

「クラカタウ(29)」

指揮官が部下二人を従えて小屋の中に入る。野戦警官は片手に抜き放した剣、片手にレボルバーを持ち、臨戦態勢になっている。指揮官の訊問がはじまった。
「おまえはここで何をしている。」
「宗教の勤めを行っております。」何度も繰り返されたヌサ・ブラマの答え。
「わしにナンセンスは通じないぞ。おまえはこの寂しい場所で叛乱を企てている。おまえは共産主義者で、追従者を何人も作っている。」
「わしの従者はこのクスディひとりしかおりません。」
「おまえは警察の目を節穴だと思っているのか?金曜日になると何百人もここにひとを集め、呪文やお守りを与えている。」
「それはわしが招いたのでなく、みんなわしの治療を求めてやってきているのです。」
「おまえは医者の免状を持っているのか?もしおまえが本当に上手に治療できるのなら、どうしてもっと賑やかな場所で店開きしない?そうすればおまえが騙している愚か者たちから金をもっとたくさんせしめることができるではないか。」
「わしは患者から報酬を取っておりません。」
「詐欺師宗教者はみんなそう言う。取調官の前でたっぷり申し開きせよ。」
「わしの行いをここの警察はもう知っております。わしが詐欺師でも煽動者でもないことをこの地元の副郡長様がよくご存知でいらっしゃる。」
「副郡長がおまえにたぶらかされて弟子になっていれば、それはありうることだ。おまえを連行するから一緒にきてもらうぞ。」
「今夜でなければなりませぬか?わしは逃げも隠れもしませんので、明朝にしていただくようお願い申し上げる。わしには妻と娘がおり、ここに置いて行くわけには参りません。」
「だめだ。」
「しかしこの女たちを置いていくわけには・・・」
道案内をしてきた男が指揮官になにごとかをささやいた。
「おまえの妻子も取り調べることになる。しかし妻子は明朝来ればよい。いまはおまえとその男が連行される。」
「どこへ?」
「おまえの弟子の副郡長のところだ。その前にこの小屋を捜索する。調べろ!」
野戦警官たちが小屋の中を調べ始めた。ヌサ・ブラマの表情が不安に染まる。しかしかれらは何ら不審なものを見つけることができなかった。洞窟の奥への入り口もかれらの目をのがれることができた。クスディが機転をきかせ、大きな石を転がしてその入り口を塞ぎそれがわからないようにしたのだ。指揮官は言う。
「さあ、行くぞ。おまえの妻子は心配無用だ。この刑事とかれの部下ふたりがここに残る。明朝、みんな副郡長役所に来るのだ。」

ヌサ・ブラマとクスディは仕方なく警官隊に連行されて山を下りて行った。ヤティとレッナサリは不安に泣きながら小屋の奥に入り、三人の男たちは縁台にすわって時が経つのを待っている。
[ 続く ]

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この作品は西さんの提供です


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