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「クラカタウ」
西 祥郎

「クラカタウ(30)」

一時間ほどたってから小屋の扉が外側からノックされた。扉が開かれ、長い外套を着た男が三人、小屋の中に入ってきた。ひとりが言う。
「船の用意ができたようだ。青い火が見える。」
     
刑事たちが外に出て暗いスンダ海峡に目をこらすと、下界のチャリタ湾の海岸に停泊している船のマストに青い火が灯されている。刑事は小屋に戻ると奥の壁をノックした。涙にくれていたヤティとレッナサリは不安で眠るどころではない。目を泣き腫らして奥から出てきたふたりに刑事は言った。
「奥さん、いま指揮官から知らせが入った。あんたがたふたりは取調べのために今すぐ一緒に来てもらわねばならん。すぐに着替えをしてくれ。ぐずぐずしていると行者に悪いことが起こる。」

闇の中を苦労しながら坂道を下るヌサ・ブラマの妻と娘の足元を懐中電灯の明かりが丁寧に照らし、ふたりは転ぶこともなく山を下りてきた。女ふたりを交えた一群のひとびとが山を下ってくるのを、ワルンから出てきたミクンは不審な思いで見守った。行者の妻が、空家になってしまった小屋の留守を頼む、とミクンに声をかける。「こんな夜中にいったいどちらへ?」とミクンが問うと、行者の妻が口を開く前に一緒にいた刑事が答えた。
「おまえの知ったことではない。口を閉じろ。」
刑事はそう言って一行の足を急がせた。そのときミクンは、以前アブドゥル・シンティルに付き添っていたパレンバン者がその一行の中に混じっているのに気が付いた。
[ 続く ]

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この作品は西さんの提供です


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