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「クラカタウ」
西 祥郎

「クラカタウ(36)」

ラデン・ムリアたちの乗った警察蒸気船は海面を疾走する。水平線上にマストの先だけ突き出していた船の姿がどんどんその全貌を表してくる。風を受けて膨らんだ緑色の帆がはっきりと見えるようになってきた。もう30分ほどで追いつくことができそうだ。しかし帆船に乗っている者たちも警察が追跡していることを知っていた。帆船では水夫が数人、櫂を海中に伸ばして漕いでいる。
     
さらに15分ほどが経過し、二隻の間隔は狭まってきた。午前9時、空は明るく晴れ上がっており、海面は穏やかだ。舷側に打ちつけては船に砕かれる波の音だけが耳に優しく聞こえる。遠くからはクラカタウの島々の波打ち際に打ち寄せる潮騒が一定のリズムで響いてくる。緑色の帆を張った帆船はいまやパンジャン島とラカタ島の間を通ってクラカタウのカルデラに進入した。かれらはそこを横断しようとしているのだ。帆船の中にいるひとの姿をはっきりと見ることができる距離にまで近付いたので、ラデン・ムリアは野戦警官のカービン銃を借りると帆船のマスト目掛けて狙撃した。停船命令だ。弾丸はマストに命中したが船は停止しようとせず、反対に銃を撃ちかえしてきた。蒸気船が被弾する。三名の野戦警官はすぐに応戦しようとしたが、ラデン・ムリアはそれを押し留めた。あの船には行者ヌサ・ブラマの妻と娘が乗っている。流れ弾の犠牲者にしてはならない。もっと近寄ってから抵抗する者を狙撃せよ。

[ 続く ]

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この作品は西さんの提供です


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