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「クラカタウ」
西 祥郎

「クラカタウ(38)」

蒸気船がラブアンに戻るとラデン・ムリアはすぐにクラカタウが火山活動を再開したことを自分の上司である郡長に電話で報告し、さらに自分の父親であるランカスビトゥン県令にも電話を入れた。そのあとラデン・ムリアは救出されたふたりの女性を伴ってシンダンラウトの副郡長役所に戻った。
     
45年前地上に大きな災厄をもたらしたクラカタウの復活を自分の目で見たいと言ってランカスビトゥン県令がラデン・ムリアの役所に自動車でやってきたのはその日午後2時。県令が妻と娘を伴ってきたのにラデン・ムリアは悦んだ。両親と妹に再会するのは久しぶりだったからだ。シンダンラウトの副郡長がラカタ島で火山の爆発を体験してきたという話にみんなが疑問を抱いていたのは言うまでもない。いったい何をしにそこまで行ってきたのだろうか。チワリラン山の行者の話とその妻子の誘拐事件に興味を惹かれたみんなは、いま副郡長役所で書記役が調書を取っているヌサ・ブラマの妻子に会いたいと望んだ。こうして妻および娘のルッミニをまじえたランカスビトゥン県令ハサン・ディニンラの一家とヌサ・ブラマの妻とその娘という二組の家族が対面した。ヌサ・ブラマの妻ヤティが県令夫妻と話しているとき、ラデン・ムリアとルッミニはレッナサリを庭に連れ出した。
     
山中でのバドゥイの暮らしの話をしている中でラデン・ムリアがルッミニに、ヌサ・ブラマの一家は高貴な血統でありまた決して貧困ではない、と語ってレッナサリが身につけている腕輪を指し示した。数個のトルコ金貨が鎖でつなぎ合わされたその腕輪は高価なものであるのがひと目でわかる。いまではもう世の中に出回っていないそのような腕輪はいま求めればたいそうな金額がするにちがいない。それをじっと見ていたルッミニは、自分の腕を伸ばしてレッナサリの腕輪の隣に並べた。ルッミニの腕にもそっくり同じ腕輪が巻かれている。

「これはわたしのお母様からもらったものです。」とレッナサリが言う。
「わたしのはわたしのお父様からもらったものよ。わたしたちがそっくり同じものを持っているなんて、奇遇だわ。」とルッミニも言う。

ラデン・ムリアははっと気付いて自分の服の下からペンダントを取り出した。鎖に大きい銀製メダルのついているそのペンダントは、レッナサリの胸で揺れているものとそっくりだ。[ 続く ]

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この作品は西さんの提供です


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