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「クラカタウ」
西 祥郎


「クラカタウ(44)」

翌朝、行者とウジャンは再び山に登った。洞窟に入って神像の修理をし、そして小部屋の中を整頓した。整頓されたその小部屋は古代神を崇める質素な神殿としての姿を示していた。奥の壁沿いに像の鎮座する小高くなった玉座があり、その後ろの壁にはウィスヌ神を象徴するさまざまな彫刻が施されている。修理した神像を玉座に据えたふたりは小部屋の中央に座って神像に拝礼し、香を焚き花びらを撒いて一心に祈祷を捧げた。神像を修復する作業の中でウジャンはその背に刻み込まれたサンスクリット文字をはっきりと目に焼き付けていた。『われが壊れるとき この国と汝の子孫も滅亡する ラカタの怒りに触れて』
     
ふたりが洞窟から出てきたとき、地表を焼く太陽が頭上で輝いているのに驚かされた。ここ一週間というもの、そんな太陽を見ることがなかったのだ。灰ももう降っていなかった。明るい太陽に照らされたスンダ海峡の美しい光景が山頂の西側に広がっている。そしてアニエル、ワリギン、ラブアン一帯の海岸線が荒廃した姿をさらけ出していた。
     
傷の回復で元気を取り戻した少女は、自分のことを行者に話すようになった。自分の名前はヤティあるいはネンヤティでハサンという兄がおり、両親はワリギンにいるが名前を知らない。母はみんなからンデンと呼ばれ、父はアガンと呼ばれている。そして祖父の家に行くために使用人と馬車で家を出たが、大音響が轟いたとき馬が暴れて馬車から振り落とされ、そのあとは何も覚えていない。ワリギンがどうなったかを知った行者は、孤児になったヤティを自分で育てることに決めて南バンテンの山中に連れて帰った。妹ができたウジャンは悦び、すぐにヤティをあやして一緒に遊びはじめた。ヤティの顔に笑いが戻った。その行者がアシェカ爺であり、ウジャンがいまのヌサ・ブラマであるのは言うまでもない。[ 続く ]

[ 続く ]

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この作品は西さんの提供です


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