ジェイピープルメインページへ インターネットコンサルティング

「クラカタウ」
西 祥郎

「クラカタウ(46)」

ヌサ・ブラマは硫黄臭の濃くなった神殿を後にした。洞窟から出て小屋の外に向かう。疲れきった風情を漂わせるヌサ・ブラマの後姿をクスディは黙って見送った。ヌサ・ブラマはスンダ海峡を見下ろす岩に座ってクラカタウを見た。三つの島に囲まれた内海のラカタ島に近いあたりから黒煙が立ち昇っている。内海には沈没した帆船のマストが突き出ている。ヌサ・ブラマは再び小屋の中に入り、クスディに明朝までは誰にも会わないと告げて奥に入っていった。
     
それから数時間して副郡長の用人が、ヌサ・ブラマの妻子は無事に保護されてシンダンラウトにいるのでヌサ・ブラマも副郡長役所にお越し願いたい、という知らせを持ってきたが、クスディは翌朝までそれをヌサ・ブラマに知らせることができなかった。

用人が戻ってきてヌサ・ブラマは明朝まで山頂にいないと告げるとランカスビトゥン県令が、ならば明朝われわれみんなでチワリラン山へ行こう、と提案した。その夜みんなは副郡長役所に泊まったが、眠るどころではない。ハサン夫妻とスリヤティが交わすさまざまな話はいきおいレッナサリの結婚に関する話題へと発展した。レッナサリの相手がいないという話が繰り返され、ハサンがレッナサリの気に入った男はいないのかと質問する。

「いないこともないようですよ。」というスリヤティの言葉を聞いてラデン・ムリアは身を硬くした。
「ならばわしの姪に幸せな結婚ができるよう取り計らってやりたい。」
「わたしの甥はどうなんですか?まだ独身の副郡長様は身を固める予定があるんですか?」
「ああ、チアンジュール県令の娘との話しがあるのだが、本人がなかなか首を縦に振ろうとしない。」
「じゃあ驚かないでくださいよ。レッナサリのお気に入りはあなたの息子なんですよ、ハサン。」

それを聞いてラデン・ムリアが有頂天になったのは言うまでもない。自分もレッナサリ以外の女性を妻に迎える気はないとラデン・ムリアはみんなの前で告白し、では明日ヌサ・ブラマに承諾をもらおう、と衆議一決した。

[ 続く ]

全文を読む場合はこちら

この作品は西さんの提供です


※このサイトに掲載されている内容(データ)は ジェイビープルが所有するものであり、無断転載、転用及び無断複製は一切禁止します。
※リンクはフリーです。Copyright(c)2004-2005 JPEOPLE