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「クラカタウ」
西 祥郎

「クラカタウ(47)」

翌朝早く、一行はチワリラン山に向かって出発した。山頂に着いた一行は眼下にスンダ海峡を見下ろし、ラカタ島が黒煙を噴き上げているのを見てクラカタウの活動がはじまったことを確認した。小屋に入るとクスディが、ヌサ・ブラマは洞窟に入ったきり出てこないと言う。スリヤティが夫を連れ出すため洞窟の中に入って行った。しばらくして消耗しつくした風情のヌサ・ブラマが姿を現し、ランカスビトゥン県令とその妻子に挨拶をする。ヌサ・ブラマが警察に連行されたあとの推移をスリヤティが話し、その後を継いでラデン・ムリアが海上の追跡行をヌサ・ブラマに語って聞かせた。スリヤティとレッナサリはアブドゥル・シンティルに惹かれて駆落ちしたのでなく、パレンバン者の悪巧みの罠に落ちたのだという話しを聞いてヌサ・ブラマの顔に後悔の色が浮かんだ。ヌサ・ブラマは怒りと絶望に駆られて自分がしたことを素直に語った。ウィスヌ像とクラカタウ火山の爆発の関係をそのまま信じられる者はいなかったが、昨日のクラカタウが噴火するというヌサ・ブラマの予言を思い出したひとびとにはその考えを否定することもできなかった。スリヤティが夫に、自分の身元が明らかになった話をする。ヌサ・ブラマは妻がランカスビトゥン県令の実の妹であるという事実にふたたび驚かされた。

「それを聞いてわしは安心した。妻と娘の将来を見守ってくれるひとがいるのだ。」
「その通りだ、行者殿。それよりもっと強い絆が生まれるかもしれない。つまりわたしは息子のラデン・ムリアの嫁としてあんたの息女レッナサリを申し受けたいと希望しておる。ぜひこの申し込みを受けていただきたい。どうかな、行者殿?」
ヌサ・ブラマはうつむいて考え込んでいたが、しばらくしてから愁眉を開いた。
「わかった、お受けいたしましょう。わしの娘、パジャジャラン王家の女王たるスリラトゥデウィ・レッナサリと将来のランカスビトゥン県令であるラデン・ムリアの婚儀を認めよう。これでわしの心配の種が消えた。それではランカスビトゥンに戻られるとき、どうか妻子を連れて行っていただきたい。」
「行者殿、あんたも一緒に来てもらいたいとわたしは希望するが・・・」
「いや、それはできません。わしにはまだしなければならない仕事がある。クラカタウの爆発を止めなければならぬ。それはわしにしかできないことだ。」
「どんな方法で?」
「それはいま申し上げられない。それよりもいまから重要な儀式を行いたいので、みなさんに奥の神殿にお入りいただきたい。」
県令と妻とルッミニ、そしてラデン・ムリア、またスリヤティとレッナサリが狭い通路を通って洞窟奥の小部屋に入った。ウィスヌ神像が置かれていた玉座にレッナサリを座らせるとヌサ・ブラマがスピーチを始めた。

[ 続く ]

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この作品は西さんの提供です


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