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「クラカタウ」
西 祥郎

「クラカタウ(48)」

「親族一同のみなさん、わがひとり娘レッナサリは今日ただいまスリラトゥデウィ・レッナサリの称号で、パジャジャラン王家の血統を継ぐわしの後継者として一族の頭となったことを表明する。しかし近い将来レッナサリはランカスビトゥン県令子息ラデン・ムリアの妻となるので、その地位を続けることができない。こうして五百年以上続いたパジャジャラン王家の血統は絶えることになる。ただしレッナサリが産んだ最初の男児は母親の地位を継ぎ、またわしが行ってきた行者のつとめを継ぐことができる。つまりスンダ伝来の宗教を奉じ、あちらこちらの聖所を訪れて定められた務めを果たすことだ。ラデン・ムリアとレッナサリの婚姻の前にわしの願いが叶えられるかどうかを確かめておきたい。ハサン・ディニンラ殿、ラデン・ムリア殿、いかがでござろうか?レッナサリが産む最初の男児をヒンドゥ教徒とし、バドゥイの行者としての暮らしをさせることをお許しになるだろうか?」
「わたしに異存はないが、この時代にそのようなことがそれほど重要なことなのかどうか。」県令の言葉にヌサ・ブラマは「これは大変重要なことなのです」と答えた。

ラデン・ムリアが言う。「行者殿、その証拠はありますか?」
「証拠?クラカタウがどうなったかを見れば十分ではありませぬか。」
「ならば行者殿が一年のうち半分を使って手入れと守護を行っている聖地をその子はどうやって知るのですか?レッナサリはそれを知っているのですか?」
「最初はそうしようと思ったが、今は考えが変わった。聖地を知っているのはひとりだけではない。バドゥイの頭たちが教えてくれる。その子が15歳になったらバドゥイ部落に連れてきてくだされ。バドゥイの衆は必ずやその子を尊崇し、その子に必要なことをすべて教えてくれる。」
「しかしバドゥイの衆にどうやってその子が高貴の血統の子孫だとわかるのですか?」
ヌサ・ブラマは神殿の一方の壁に近寄り、四角い形をした石をそこから外した。その中から出てきたのは大きな宝石のついた黄金の王冠がひとつ。
「これはパジャジャラン王国の王冠で、歴代王の頭を飾ったもの。スリラトゥデウィ・レッナサリの頭を今は飾る。」
ヌサ・ブラマはそう言ってレッナサリの頭にそれを載せ、しばらく呪文を唱え唄を歌った。それからその王冠をまた持ち上げると白い布の袋に入れ、ラデン・ムリアに手渡した。
「婿殿。この品物をあんたの長男が15歳になってバドゥイ一統の頭となるときまで大切に保管してほしい。そしてここで行われたこと、またこの王冠のことは誰にも話さないように。」

ラデン・ムリアがそれを請合うと、ヌサ・ブラマはかれをレッナサリの隣に座らせた。香が焚かれ、ヌサ・ブラマは神々への賛辞と呪文を唱え、ハサンにラデン・ムリアの手を握らせ、自分はレッナサリの手をつかみ、ふたりの手を重ね合わさせた。正式に一組の夫婦が誕生した。新郎新婦はそれぞれの両親の足元にひざまずいて足に接吻した。こうしてすべての儀式は終了した。

[ 続く ]

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この作品は西さんの提供です


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