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犯罪者へのリンチ・やさしい人への贈り物

Tv7のニュースを見た。場所はデンパサール、白昼のできごと―。

恐ろしい光景であった。携帯電話を盗もうとした二人組みのチンピラを、村人がよってたかって嬲り殺しにしているシーンである。三分ほどであった。警察がやってきて犯人を連れて行くまでをテレビカメラが撮り続けていた。犯人はサッカーボールのように容赦なく蹴られ、ときには踏みつけられ(アスファルトの上で、しかも頭部)、血みどろである。意識は朦朧としていつ死んでもおかしくない状態だ。ようやく警察がやってきて犯人を車に乗せる。しかし警官がいるにもかかわらず、犯人に殴りかかる者もいて、おまけに警官も特に止めようとはせず、村人をなだめるような感じで(「まあまあ抑えて。俺も君たちの気持ちはわかる。でも仕事なんだよ」といった調子)、なんとか死ぬ一歩手前で犯人を連れていった。

映画などは残酷なシーンを上映禁止にしているが、こちらの方がより残酷であるにもかかわらず、ドキュメンタリーに関してはカットなしである。まだ三歳にならない息子が「マッティ?(死んだの?)」と訊いてきた。どう答えてよいかわからず、黙っていた。15年インドネシアに住んでいても、こうやってリアルなシーンを見るとやはりカルチャーショックは受ける。

そのニュースの直後、今度は『どっきりカメラ』のようなコーナーがある。どう見たって貧乏なスンバコのワルン(日常生活品の屋台)で働いている少女(20歳ぐらいかな)に、見ず知らずのおばさんが近づいてきて、『母が死にそうだ』とか何とか泣き声で物乞いをするのである。正直者の少女はおばさんに対して、二万ルピアを手渡した。そこでどうなるかといえば、今度はテレビ局の人がやってきて「これは実はお芝居です。正直で心優しいあなたには、番組から、あなたがおばさんに施した、十倍の金額を差し上げます」で、少女は20万ルピアの現金を受け取るという次第―。

やらせかどうか定かではないが、さっきの残酷リンチ直後だっただけに、リンチと心優しい貧乏少女の取り合わせが、なんだかインドネシアそのものを象徴しているようで、またまたカルチャーショックを受けるのである。

以前バリでパンク強盗にあったとき、犯人が見つかったと警察から連絡があり、留置場で犯人を確かめたことがある。犯人は血みどろ。そのときも正視できなかったぐらい、ぼこぼこにされていた。おそらく住民か警察に殴られたのだろう。この国には『一寸の虫にも五分の魂』だとか『情けは人のためならず』とかの諺はない(あるのかな?)。しかし「だからこの国は駄目だ」とは思わない。ただただカルチャーショックを受けた。インドネシアは深い。

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